高新寄席へ

金曜日
第二回高新寄席に行ってきた。
真打ちの二人は,春風亭一之輔,古今亭志ん陽,前座を勤めたのは二つ目の春風亭朝也。

三人とも力があるし,好きな落語家が揃って,大満足だった。
地方で,慣れないお客さんを相手にした高座なので,演題は手堅いところをそろえてくるので,ちょっと物足りない面もあるけれど,一回きりの気合いを感じられてよかった。

特に,一之輔の「青菜」は,枕から爆笑続きで,アゴが疲れる程だった。

今回の会場,入ってみると,残念ながらそう広いとは言えない会場なのに,席数に対してチケットはかなり売れ残ったらしい。
(この人気,力のある若手をそろえて,東京では考えられない状況では???)
そこで,主催者は考えたようだ。バラバラとお客が座って空席が目立ったら,師匠方に失礼だと。そこで,会場の後方を立ち入り禁止として,客を全て前半分に集めた。この暑い時期に,余裕があるのに,詰めて座らされた客の中には不満を漏らす声も聞こえてきた。(自分もその一人)。おまけに中央には,ソファーをならべたVIP席。

さて,このおかしな会場の様子を,一之輔師は実に巧みに笑いにした。
枕の途中で遠足のお弁当の話に入った。ちょっと,なぜその話?というような展開だった気がする。そして,お母さんが手をかけて色々詰めてくれた弁当を,子供はつい振り回しながら歩いてしまう。そして,皆で弁当にしましょう,といって弁当箱のふたを空けると,綺麗に詰められたはずの中身は,ギュウっと半分くらいに寄ってしまい,あとの半分にはただ,空間が広がる。
今日の会場を見て,それを思い出した,と。

客のまばらな会場など,つねに経験しているので,無理矢理前方に詰め込んだ客席は予想外だったかもしれない。多分そんなのは学校で生徒に無理矢理聞かせる学校寄席くらいだ。

客を前に詰め込んで演者に,そしてVIP席を作って地元の名士(?)に気を使う,化石のような主催者の気配り。余計な気遣いへの戸惑いと,まだのこる地方の気遣いに触れた嬉しさを感じさせながら,でも今日の会場の様子は変だよ!と客を笑わせながら,主催者にチクリと知らせてくれたのかと思うと,ますます愉快だった。

今回聴いて,なんと行ってもライブ,生でこそ落語の魅力がわかると改めて感じた。
まだ主催者の慣れない様子,客の入りも今ひとつ,でも高知で聴ける貴重な生の落語。
これからもこの落語会が続いて欲しい。